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MFAサイトの正体とは?Spider AFの独自調査を交えて解説
インターネット上には有益な情報やサービスを提供している多くのウェブサイトが存在します。しかし、そのなかには広告収益のためだけに作成された「MFAサイト」と呼ばれる悪質なウェブサイトもあるため、広告出稿の際には注意が必要です。
本記事では、MFAサイトの特徴や識別方法、そしてこれらのサイトから広告主が身を守るための効果的な戦略について詳しく解説します。デジタル時代の広告活用において知っておくべき重要な情報を、分かりやすくご紹介しますので、ぜひ役立ててください。
MFAとはユーザー体験を犠牲にする危険なサイト
MFA(Made-for-Advertising)サイトは、デジタル広告で収入を得ることだけを目的として設計されたウェブサイトです。2023年9月にアメリカの広告主団体「ANA」が声明を発表してから徐々に日本でも認知が広まってきています。本人確認のための認証方式である「多要素認証」もMFAと呼ばれていますが、こちらはMulti-Factor Authenticationの略で意味が異なるため、本記事では割愛します。
ここでは、MFAサイトの基本的な概念と、それらの特徴について詳しく見ていきましょう。これらのサイトは、トレンディングトピックや人気のあるキーワードを多用し、訪問者を引きつけ、大量のページビューの獲得を目標にしています。
MFAサイトの特徴
MFAサイトはいくつかの典型的な特徴を持っています。アメリカの広告4団体、ANA、4A's、WFA、ISBAによって定義されたMFAサイトの特徴は以下の5つです。この特徴が見られた場合、MFAサイトの可能性が高いです。
1.コンテンツに対する高い広告比率
デジタル広告全体の平均広告数と比べて、少なくとも2倍の広告が表示されます。例えば、デスクトップ上に表示されたページコンテンツに占める広告の割合が30%以上の場合などです。ページ上に異常な数の広告が存在し、コンテンツよりも広告が目立つことがあります。
2.広告枠が早いサイクルで自動更新される
・多くの自動更新されるバナー広告
・自動再生されるビデオ広告がサイト上に溢れている
・コンテンツにアクセスするために訪問者に複数のページをクリックさせるスライドショー
ユーザーの視線が自然に集まる場所への大きな広告の配置や、記事の途中に何度も広告を挿入する方法はMFAサイトが使用する定番の手法です。また、ページをスクロールするたびに新しい広告が自動更新されるような設計になっていることもあります。
3.有料トラフィックの割合の高さ
MFAサイトは通常、オーガニックのトラフィックがほとんどなく、代わりにSNSやコンテンツプラットフォーム、そして信頼できるパブリッシャーのウェブサイト上に掲載されるクリックベイド広告(クリックを誘発する広告)からのトラフィックに大きく依存しています。
有料トラフィックの購入がMFAビジネスの主なコストドライバーです。有料トラフィックの獲得コストの採算が取れるように、MFAサイトは積極的な収益化を行います。
4.テンプレート化された低品質のコンテンツや古く、独自性のない、再利用された記事
質より量を重視し、SEOを最大限に活用して検索エンジンでの順位を上げるために、キーワードを過剰に盛り込んだ記事を多用します。
最近では生成AIを活用してより効率的かつ大量にMFAサイトを量産しているという点も指摘されています。
5.テンプレート化されたデザイン性のないウェブサイト
魅力的なデザインを重視するよりも手間をかけずに作成できるテンプレート化された簡易的なウェブサイトのデザインです。
このように、コンテンツの質を犠牲にして広告の配置と数を増やすことが、MFAサイトの典型的な戦略となっています。MFAサイトは、ユーザーに有益な情報を提供するよりも、ユーザーをページに留めて広告の露出を最大化することを優先しています。自動で検知することは難しいですが、目視でウェブサイトを確認すると違和感があるようなコンテンツ、デザインであることが多いです。
広告配信ネットワーク側でも対策は強化されているものの、メインのドメインは問題ないものにして配下のディレクトリでMFAサイトを大量に生成する方法もあります。
MFAサイトのメリットとデメリット
MFAサイトへ広告を掲載するメリットは全くありません。大量のインプレッションを低コストで得ることができますが、水増しされた見せかけの数字です。ターゲットとなるユーザーには届いていなく、企業の広告費が浪費されてしまうだけです。また金銭的なデメリットだけでなく、トラフィックの質やブランドイメージのリスクなどのデメリットも伴います。
MFAサイトへ広告を掲載するデメリット
・低品質のトラフィック
MFAサイトのトラフィックは質が低い場合があります。訪問者の意図が広告閲覧ではなく、単にコンテンツ消費であるため、コンバージョン率が低いことが懸念されます。
・ブランドイメージのリスク
品質の低いサイトやスパム的な要素を持つサイトに広告を掲載することで、ブランドイメージが損なわれる可能性が高くなります。信頼性の低いプラットフォームと見なされることもあるでしょう。
・広告の無効クリック
MFAサイトでは、広告の無効クリックやアドフラウドが発生するリスクが高まり、広告費用が無駄になってしまいます。
・ユーザーエンゲージメントの低さ
MFAサイトのユーザーは、サイトのコンテンツ自体には興味を持たないことが多く、広告に対するエンゲージメントも低くなる傾向があります。これが、広告のクリック率やコンバージョン率に悪影響を及ぼします。
年間1億1,400万円規模のMFAサイトによる被害を検知
Spider AFでもMFAサイトを多数検知しています。2023年のSpider AFの独自調査では、全ディスプレイ広告の2.75%を占める、およそ1億1,400万円以上がMFAサイトへ浪費されていたことが判明。Spider AFのさらなる調査により、約1,000の無関係なウェブサイトが特定され、150万を超える無効クリックが検出されました。
また、とある広告主の広告予算の約12%、月間630万円以上がMFAサイトの被害に遭った事例もあります。
Spider AFが検知したMFAサイトの疑いのあるウェブサイト例
MFAサイトの一例としてよく挙げられるのは、特定のトレンディングトピックや人気キーワードを集中的に扱うウェブサイトです。これらはしばしば、エンターテインメント、健康、技術といった広範囲にわたるテーマで、内容の薄い記事や情報を大量に生産しています。
例えば、「究極のダイエット食品ベスト10品」や「いますぐ人生を変える方法」など、センセーショナルで具体性に欠けるタイトルが特徴的です。これらの記事はSEOに最適化されており、検索結果で上位に表示されることを目指していますが、内容は表面的であり、広告が多く含まれています。
実際のMFAサイトと疑われるウェブサイトを詳しく見ていきましょう。まず目に飛び込んでくるのが、”50歳を過ぎたら食べないようにしたい人気食品10選”というタイトルです。50歳を過ぎた健康思考の人なら思わずクリックしたくなるような目を引くタイトルの記事です。コンテンツよりも広告の方が目立ち、ディスクトップ画面の30%以上を広告が占めています。
一見するとまともな内容が書かれているかのようにも見えますが、よく読むと信憑性のない、表面的な内容ばかりです。また文字数が400〜500文字と通常の1/10にも満たず、非常に少量です。”この記事の続きを読む”という次へボタンがあり、すぐに次のページに誘導するのもMFAサイトの特徴の一つです。MFAサイトは広告が表示されるごとに収益が発生するインプレッション課金。そのためユーザーがページを移動するたびに新たな広告が表示され、収益へ繋がるのです。
スクロールをするとその下にも広告は続き、おすすめ記事も出てきました。「糖尿病のリスクを下げる食べ物16選」「がんのリスクを下げることのできる食べ物20選」など衝撃的なタイトル、無料の写真素材をサムネイルとした記事だけで構成されていて、記事を読まなくとも低品質なコンテンツであることがひと目でわかります。
MFAサイトの正体は?
ウェブサイトを確認すると運営元はイギリスで設立した会社であることが明らかとなりました。
さらにGOV.UKというイギリス政府が提供する公式ウェブサイトで会社の財務状況を確認すると、2022年の1年間で約2,100万円の売掛金が。この全てがウェブサイトでの広告収益か定かではありませんが、このウェブサイトを悪用してビジネスを行っている可能性は大いにあり得ます。
Forbesが意図的にMFAサイトを運営していた可能性が
どこの誰が運営しているか分からないのがMFAサイトと認識している方も多いかと思いますが、実はプレミアムパブリッシャーのForbesがMFAサイトを運営していた疑惑が浮上し、業界内に激震が走りました。
adalyticsによると、Forbesが「www3.forbes.com」というサブドメインを数年前から運営していたことを明らかにしました。これは広告収入を得ることを目的としたMFAサイトの典型的な特徴を持っていて、メインのForbesサイトよりもはるかに多くの広告を1ページに表示し、トラフィックの大部分をTaboolaやOutbrainのようなプラットフォーム上の有料広告から得ていました。
「www3」のコンテンツはしばしば質が低く、リスト形式で多数の広告リフレッシュが行われていました。このサブドメインは検索エンジンによるインデックスを回避し、広告からの直接リンクなしでは簡単にアクセスできませんでした。メインサイトとは異なり、「www3」サブドメインは標準的な広告検証ツールを使用しておらず、これによりドメインのスプーフィングや誤って宣言された広告インベントリに関する懸念が生じました。
主要ブランドはこの低品質のサブドメインで広告が配信されていることを知らずに、高額な料金を支払っており、デジタル広告の実践において倫理的および透明性の問題を引き起こしています。
この疑惑とその後の精査を受けて、フォーブスは「www3」サブドメインを閉鎖しました。同社は、広告主がフォーブスのメインサイトのプレミアム広告枠を購入していると誤解させながら、実際にはこの低品質なサブドメインに広告が掲載されていたという批判に直面しています。adalyticsの調査によるとJPMorgan Chase、P&G、Wall Street Journal、Ernst & Young (EY)、Mercedes Benz USA、The New York Times、PricewaterhouseCoopers (PwC)、McDonald's、ディズニーなどの大手ブランドを含む広告主は、実際の配置を知らず、MFAサイトの広告にプレミアム料金を支払っていたと報じられています。
フォーブスは、adalyticsの報告書を批判し自社を擁護していますが、この出来事はデジタル広告業界におけるアドフラウドとメディア品質の低さという広範な問題を浮き彫りにし、物議を醸しています。
どのようにしてMFAサイトを回避すべきか?
MFAサイトにもメリットはありますが、健全なビジネスを展開する広告主にとってはデメリットの方が重要と考えるべきでしょう。広告の即効性については魅力的ですが、目先の水増しされた数値でしかなく、長期的な視点で捉えると無意味なところに浪費していると言えます。
広告が表示されるウェブサイトの管理
「どういったウェブサイトに広告が表示されるのか」は広告主のブランドイメージに直結するため、広告が表示されるウェブサイトの質を厳しく管理することが重要です。広告を出稿する際には、ブランドに悪影響を及ぼす可能性のあるコンテンツを避け、第三者のブランドセーフティツールを使用してリスクを管理しましょう。
定期的なモニタリングとレビュー
広告のパフォーマンスデータを定期的にチェックし、広告がどのサイトに表示されているかを確認します。低品質なサイトが含まれている場合は、速やかに広告配信を停止します。第三者のブランドセーフティツールから提供されるレポートも活用し、広告が表示されるサイトの品質を継続的に監視しましょう。
MFA問題のまとめと未来展望
MFAサイトの将来は、広告プラットフォームの規制強化、技術の進化、ユーザーの意識向上、広告主の対応など、さまざまな要因に左右されます。これらの要因が合わさることで、MFAサイトは徐々に淘汰される可能性もあれば勢力を増していく可能性もあります。
やはり重要なのは広告を出稿する広告主のMFAサイトに対する意識です。マーケターは、目先の数字に騙されず、正しいKPI設計をし、広告パフォーマンスを確認し対策に努めましょう。Spider AFを活用することで広告配信状況がすぐに確認できます。MFAサイトも多数検出している実績もあるので、ぜひお気軽にお問合せください。